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日本語電子出版の行く末(1)

日本における電子書籍を巡って、色々なことが言われている。キンドル、アップル、グーグル電子書籍日本語版の普及が遅れている理由に、日本語の特殊性を言い立てるのは、すべて小理屈である。実態は日本の出版界が、こぞって妨害しているためだ。

日本語組版独特の仕様に合わせる?

一つは、既存の出版社等が挙げている、日本語組版独自のローカル・ルールだ。いわく、縦組みができないと駄目だ、禁則処理がなってない、ルビに対応しろ、などなど。こちらが総本山⇒日本電子出版協会

しかし、日本語組版のルールなんて、読みやすくするために、印刷の職人さんが工夫をこらしてきた結果にすぎない。これを金科玉条として、微塵も変えていけないというものではない。
職人さんたちは、読みやすい書籍を造るため、その時代の技術と知識で努力してきた。読む人たちのことを考えてのことだ。出版社があたかも自分たちの手柄のごとく、出版文化だの伝統だの笑止千万。

いま抵抗している者たちは、自分たちの既得権益を守ることしか考えていない。出版社も取次も印刷会社も、そして著作権者もだ。読者のことは全く念頭にない。日本語組版など言い訳にすぎないのだ。新しいメディアには新しい組版ルールがあっていいし、それは可能なことだ。

特殊なのは日本出版界の慣習だ

もう一つ(こちらの方が重大なのだが)は、商習慣の問題だ。

日本で電子出版が滞っているのは、コンテンツの所有者が明らかでないからだ。
むろん出版権は版元(版木〈浮世絵の場合は主版〉を所有するところの意)のものだ。しかしながら、現在というか少し前まで、昔の版木にあたるフィルムは印刷会社が保管するのが普通だった。
置き版料を払っている版元は少数にすぎず、コンテンツがどこ(著者、出版社、印刷所)に帰属しているのか、あいまいなままにきている。ゲラに組んだ活版は持ち運びできないので、その時代からのことだろう。

慣習で、文庫本の出版は書籍と別契約とされてきた(版を組み直すから?)。この感覚のまま、にわかに加わった新しい儲け口の電子出版を、アマゾンやアップル、さらにグーグルに盗られるとでも思っているのか。
デジタルに移行してから、コンテンツの所有権がいっそう混乱している。デジタルファイルになると、版元だけでなく著作権者も所有を主張する。自ら組版データまで作る作者も出始めた。デジタルデータの2次利用について争っているのが、日本の出版界の現状なのだ。

大手出版社が著作者の囲い込みに走る。世界標準ePubを無視し、日本語表記専用の独自フォーマットを標準化しようとする者たちがいる。ここでも読者はすっかり置き忘れられた存在だ。あさましい限りである。

ついに官僚(産業革新機構)が利権ビジネス(=出版流通を「非競争領域」)に乗り出した。「出版デジタル機構」である。既刊本のコンテンツを独占しようと画策している。なんと無料で書籍をデジタル化するという。まるで〝ホームページ制作0円から!〟と同じ商法である。
しかも、その原資が平成23年度「地域経済産業活性化対策費補助金(被災地域販路開拓支援事業(コンテンツ緊急電子化事業))」だとか。いくら何でもこれはないだろう。被災地の方々に無礼ではないか。こ奴らは、すでに雲隠れしました。まるで火事場泥棒、詐欺商法の業者のようです。

アメリカの出版事情とキンドル

キンドルを考えてみよう。いちばんのポイントは流通システムからの変革だ。キンドルを作ったアマゾンは書店(流通業)ということに注目してほしい。

アマゾンのポリシーは全ての書籍がそろい、欠品がないことだそうだ。この理念を実現するために、アマゾンは最初から、在庫がなければプリント・オン・デマンドで1部から注文に応じていた。
アマゾンが提供するのはコンテンツそのもの、商品の形態を問わない。従来の書籍でもよいし、オンデマンド印刷でもよい。さらに別の形態がキンドル(電子版プリント・オン・デマンド)なのだ。

あくまでも、読者にとっての利便性から発想したもの。リアルの本だけでなく電子出版で、もう一儲けしようなどという魂胆じゃない。だから紙の本とキンドルを並行して売っている。本の新しい流通チャネルを提供しただけ、出版業を始めたわけではない。

アメリカでキンドルの普及がスムーズに進んだのは、出版権(コンテンツ所有権)が明確だったからだろう。
読者から注文のあった既刊本が、絶版だったり増刷の予定がない場合、アマゾンはプリント・オン・デマンドやAZW(Topaz)のファイルとして販売する。これは、出版社(版元)が所有するコンテンツのデータを借り受けることになる。
著者が出版社と契約していないコンテンツの場合は、キンドルで直接販売することもできる。実際は著者ダイレクトではなく、出版プロデューサーなりマネージャーを経由すると思われる。(アメリカの出版は、著作権・出版権・映像化権、出版社との契約まで、著者の代理人が管理している。ウォールストリートジャーナルのこの記事を参照されたい)コンテンツも版元でなく、エージェント管理かもしれない。

アメリカは日本と逆に、本の流通が整備されていなかった。各州をまたいで、アメリカ全土にあらゆる本を流通させるシステムがない。そこに着目して自ら本を在庫し、独自の流通網を築いたのがアマゾンである。
膨大な在庫を売るのは実店舗でなく、インターネットだ。キンドルの登場もその流れに添ったものに過ぎず、当然の帰結といえよう。PC画面が書棚、キンドルは書籍そのものに相当する。流通(配本)の効率化であり、アナログだのデジタルといった問題ではないのだ。

キンドルは電子ペーパーを使った書き換え可能な疑似冊子であって、(考え方によるが)電子書籍という性質のものではない。アマゾンは流通会社なのだから、効率化のためキンドルを開発しただけのことである。
もともとインターネット通販で売っていた本を、データ通信費のみで売れるなら、こんな扱いやすい商品はない。物理書籍より安く売るのは物流工程がないため、倉庫も配送センターも、ピッキング・梱包も不要だ。

サザエさんの漫画(原作の方)を見ると、本屋のご主人は必ずハタキを持っている。キンドルは電子立ち読みの面もあるから、嫌われるわけだ。本屋さんの仕事は店番であって、接客の必要性はあまりない。
本は通販向きの商品だったのかもしれない。アメリカも日本も、本の流通がそれぞれ特殊だったせいで、誰もそのことに気づいていなかった。
ただ、あまりにも売り手側の都合が優先されている感はある。この辺にもアマゾンが出版ではなく、流通業に過ぎない姿が現れている。キンドルが著作者・制作者にとってメリットがあるかどうか何ともいえない。

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