AIweb publish 日本語の視認性

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ページレイアウトと日本語の視認性・可読性について

書籍のレイアウト(ページレイアウト)は、なんのためにあるか。読みやすくするため、可読性を高めるためなのは論を待たない。字間・行送り・余白の取り方など。
DTPに始まる現今のデジタル・レイアウトは、欧文レイアウトを基準としている。電子書籍もむろんそうだ。
欧文組版は、アルファベット特有の形態(文字の形)に基づいたもの。欧文レイアウトは、この文字デザインを活かすべく発達してきた。そのため、デジタルレイアウトにおいて、日本語特有のローカル・ルールはとくに考慮されていない。EPUB3も然り。

欧文と日本文電子書籍の可読性ということを考えるときも、文字の形とレイアウトは密接な関係がある。日本語を欧文と比べてみると、やはり大文字小文字の違いがない、というのが決定的な差ではないのか。

その代わり日本語には、漢字仮名まじりという他の2バイト文字圏にない特徴がある。
日本語レイアウトの視認性・可読性を考えるときは、この特徴を生かさねばならない。拠って立つ文字の作りが違うのだから、欧文と日本語レイアウトの作法は異なる。

可読性は、リフローや固定レイアウトの問題ではない。縦書き・ルビなどは、電子書籍可読性の解決にはならない。

漢字仮名交じり文が日本語の特徴であり、視認性に大きな影響を与えている。この特性を生かす(従来はあまりレイアウトで顧慮されていなかった)のが、デジタルデバイス向け新しい日本語組版の決め手だと思う。どうやったら読みやすさを実現できるか、技術面に詳しくなく、皆目見当もつかないのだが。
(漫画の吹き出しが、アンチック+ゴシックなのは、そういう理由からだろうか。寡聞にして知らない)

キンドルと編集作業の関係

9月から、キンドル日本語版がいよいよ始動するという。EPUB3に準拠しているらしい。デジタル媒体における、日本語表記に関しては問題点が解決されないままだ。
ことに日本語レイアウトなどは、アマゾンからも出版社からも、一顧だにされていない。

当面は[出版社→印刷の電子部門→アマゾン→読者]、あるいは[出版社→アマゾン→読者]という形だろう。[著作者→アマゾン→読者]の場合、著者校だけになるのだろうか。そうなると編集が関わる余地はなくなる。
アマゾンは流通業なのだから当然、内容に関知しない。アップル、Googleも同じだろう。

このままの状態で、なし崩しに日本語化されれば、ますます混乱することは明らかである。「青空文庫」ほどの取り組みさえみられない印象だが……。
ただひとつだけよいことがあるとすれば、少なくとも外字は使わなくなるのではと予想(期待)している。

編集作業のひとつである校正にしても、一点一画にこだわったり、異体字の種類や書体特有の些末な差異を云々する、オールドスタイルの校正は作業現場の混乱に拍車をかけるだけという気がする。
このような字形の差異は、活字を作る時の事情から発したもの。正誤には関係ない。単なるデザインの違いであって、校正が口をはさむ領域ではない。

新しい日本語レイアウトは古典に求める

江戸名所図絵明治以来、先人たちにより、日本語表記の工夫がなされてきた。活字デザイン、組版ルール、校正技術も時代の要請にともなって、印刷技術とともに変化している。
現在はどうだろう。ホームページにおける、機種依存文字の問題を見るまでもなく、視覚媒体の技術開発の上では、新しい日本語表現の検討はなおざりにされている。

今のところ、主に雑誌・カタログのケースだが、出版においても、制作環境がデジタルになったため、従来の活版・写植・電算写植の常識では計り知れない、盲点が顕在化している。
日本語DTPは未だ過渡期といえよう。それどころか混乱期といっていいかもしれない。外字の問題、日本語と欧文混在時のカーニングの問題、PDFフローによるCTPへの移行等々。

紙ベースの出版はさておいて、デジタルデバイスにおける日本語特有のレイアウトには、明治以降ではなく、さらに先の時代の知恵に学ぶべきものがある気がする。

カリグラム的手法とくに Enhanced eBook は絵巻物や浮世絵などの、画と文が一体化した、あの表現方法を参考にできないだろうか。画と詞書の自由な発想は、日本語特有のものではないか。ベタ組みを生かすというか、メリハリはないが線と余白の対比が生きている。
欧文は、単語としての字面の塊がデザイン要素になるから、カリグラム風なレイアウトになってしまう。キンドルの《KF8》は、どの程度のものだろう。いずれにしても、HTML5では和風は無理だと思うが。

古くからhtmlで実装されているテキスト回り込みは、たぶんイニシャル・キャップスからきていると思われる。jQueryプラグインで、背景が単色のPNGなら、絵柄に添ってテキストラップできるものが、あるらしい。jQueryでの段組みも見たことがある。どちらも、可読性という観点から見るとかなり厳しいものだ。

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